恋愛ジャンキー *-甘い蜜に溺れて-*
本宮もストローを刺して、コーヒーを飲み始める。
沈黙の時間。
巻き上げるような風が吹いて、目を細めた。
地面を這うように舞い上がる砂埃が、沢村の事を思い出させた。
体育ん時。
下駄箱の前で、目許を押さえてしゃがんでた沢村を見た時。
一瞬、泣いてんのかと思った。
本宮を想って……、ツラくて、それで。
そう思ったら、何も考えないうちに身体が動いて、沢村の腕を掴んでた。
「本宮」
呼ぶと、座ったままの本宮が俺を見上げる。
本宮だってツラいのは分かってる。
本宮が彩香をどれだけ想ってたのかも。
―――それでも。
「沢村が健気で、見てらんねーよ」
呟くように言うと、本宮は目を伏せて微笑む。
「俺もだよ」