恋愛ジャンキー *-甘い蜜に溺れて-*
「都築くんっ」
下駄箱でやっと追いついて、大きな声で呼ぶ。
校庭だとか、学食だとか、体育館だとか。
色んな場所から賑やかな声が響いていたけど、玄関は静かで、人の気配もあまり感じない。
まだ汗が浮かんでいる都築くんが、ゆっくりと振り向いて微笑む。
振り向く前から、あたしだって分かってたみたいだった。
「自分から誘っといて負けるとか、すげーカッコわりーし」
そんな事を言って笑う都築くんの顔を見たら、一気に安心しちゃって、涙がこみ上げてくる。
それを我慢しながらも、持っていたタオルを都築くんに差し出した。
「さんきゅ」
静かな玄関。
微笑んでタオルを受け取る、都築くん。
都築くんが出す雰囲気とか、声とか。
全部が優しく包んでくれてるみたいに思えて、我慢しようとした涙が溢れた。