恋愛ジャンキー *-甘い蜜に溺れて-*


でも……。


「……い、ない」


そこにも、都築くんはいなかった。


「いると思ったのに……、」


ここにくれば、いつも会えたのに。

こんな時に限ってなんで……。


両膝に手をついて息を整えながら、いつも都築くんが座ってるあたりのコンクリートを見つめた。


サワサワ揺れる葉っぱ。

ひんやりして冷たいコンクリート。

遠くから聞こえてくる、野球部やサッカー部の掛け声。

空を流れる雲。


そこは、いつも通りの景色なのに。


都築くんがいないだけで、全部が物足りなく感じた。

飴玉がなくなった、透明な空っぽのビンみたい。



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