車輪の唄
ドラムスティックを持っている。


別に何も考えず通り過ぎたが、不思議な感覚が私を襲った。




私、あの人知ってる???







気になって気になって、その後のCDの棚卸しも身に入らなかった。


「葛西さん、第三スタジオから烏龍茶のオーダーあったから、烏龍茶5つお願い!!!」


主任に言われるがままに烏龍茶を5つ用意して第三スタジオまでの階段を上がっていく。


誰かに似ている気もするけど、きっと私の思い過ごしだと言い聞かせて、そう思うことにした。


「失礼しまぁ-す」


ドアを開けると、楽曲を演奏する爆音が消えた。


メンバーと目を合わさないようにして、テーブルに烏龍茶を置いた。


「失礼しました」


そう言って顔を上げた時、ドラムの人と目があった。






確実に時間は止まった。







帽子もサングラスも取り払って、ドラムの前に座っているその人は





上総…





その人だった。
< 15 / 66 >

この作品をシェア

pagetop