車輪の唄
夢を見ていた。


上総と出会った日の夢を見ていた。


ステージの上で気持ちよさそうにドラムを打ち鳴らす上総を、私は袖から見詰めている。


頭にタオルを巻ぃて、とても楽しそうに演奏する上総を見詰めている。


上総が、私の方を見て微笑んだ。


その笑顔に心が揺れた。





「…さ…ん!!…さん!!葛西さん!!!」


はっと目を覚ますと、主任の顔が見えた。


何が起きているのか分からなかった。


「…あれ??」


とっさに口から出た言葉は、とぼけた疑問詞だった。


「葛西さん大丈夫??体調が悪いなら悪いって言わなきゃ…」


主任は心配そうな顔で私を気遣った。


ふと気付いた事。


私は誰かに支えられている。


背中に温もりを感じた。


振り返った背後にいたのは、紛れもない…上総本人だった。


「大丈夫ですか??」


上総までもが自分の心配をしている。


上総が私を抱きかかえるように支えている。


「………ぁぁあああ!!!大丈夫っ!!大丈夫ですから!!すぃませんすぃません!!!」
< 17 / 66 >

この作品をシェア

pagetop