車輪の唄
頭の中は既にパンク寸前。


真っ白だ。


「葛西さん、最近勤務詰まってたし今日は帰ってゆっくり休みなさい。残りの時間は有給で付けておくから」


頭はパニック、真っ白状態の私に主任はそう告げた。


私は上総の手を振り解くようにして飛び起きた。


そしてそのままスタジオを飛び出して、ロッカールームへ転がり込んでドアに鍵をかけた。


呼吸を整ぇながら天井を見詰めていたら、涙が溢れ出てきてその場に座り込んだ。


嬉しいのか何なのか分からなかった。


どうして東京のバンドマンが三重県にいるのかも分からないし、何でうちの店なのかも分からない。


一人では考えても考えつかない沢山の理由に襲われた。


ひとしきり泣いて、私はタイムカードを押して店を出た。


雪はまだまだ降っていた。


とぼとぼ、歩いた。


店は長い商店街の一角にある。


商店街を抜けるまでにかなり長い時間がかかる。


まだ涙は止まらない。


失恋したわけでもないのに失恋したような気分だった。
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