車輪の唄
「もしもし??春菜??」


気が付くと春菜に電話をかけていた。


高校を卒業してすぐ、春菜は結婚した。


卒業式のとき、すでに妊娠6ヵ月。


3歳年上の直人くんと結婚して、今は名古屋に住んでいる。


「私、どうしたらいいの…」


また涙が大量に溢れ出てきて、言葉に詰まる。


忘れたのに。


好きだったのは確実だった。


でも溺れるのが嫌で、自分の気持ちに鍵をした。


それで全て丸く治まったはずなのに。


さっき、上総が現れた。


上総が目の前にいて、また気持ちが溢れた。


何で私の前に、また上総は現れたんだろう。


しゃくりあげながら、私は路地に座り込んで鼻をすすった。


『そうなんだ…何か話したの??』


春菜は私の気持ちを察してか、ワントーン声を落として話した。


「分かんない…何か話したっけ…びっくりして店飛び出してきちゃったから」


電話の向こうで、春菜の溜め息が聞こえた。
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