車輪の唄
『…ま…仕方ないっか』


その後、電話を切った。


しゃくりあげながら歩いている私を、道行く人がすれ違いざまにジロジロ見ていく。


恥ずかしいとかいう感覚なんか無かったけど、マフラ-に顔をうずめた。


家に着くと、お母さんの車が止まっていた。


この大雪に、きっと仕事が中止になったのだろう。


「…最悪」


更に暗い気持ちになった。


お母さんなら、今の私の気持ちを分かってくれるだろうけど…


今は話したくなかった。


相談に乗ってもらうより何より、一人で引きこもってしまいたかったから。


「…ただいまぁ」


小さな声で言って、静かに靴を脱いだ。


居間へ歩いて行くと、お母さんはテレビを見ながら寝転んでいた頭を上げて、不思議そうな顔をした。


「あれっ??お帰り…今日仕事じゃなかったの」


「うん…体調悪くて早退した」


そう嘘をついた。


『…本当に??体調悪いだけで、江夏が泣くんか??何かあったでしょ』


私はそうやって聞かれると覚悟していたのに…


お母さんは何も聞かなかった。
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