車輪の唄
舞台袖から上総を見つめていた
一瞬の時間は、あくまで一瞬だった。
ステージから降りてきた上総を
バレないように目で追った。

惹きつけられる理由が分からない。
自分でも分からなかった。
ただ明確に気付く事ができたのは
私は紛れもなく上総を好きになった…



その真実だけだった。



「嘘っ!!江夏が一目惚れ!?」


学校での昼休み、私は
人生初の一目惚れの事を
親友の春菜に打ち明けた。


「嘘嘘嘘ぉ-!!!
江夏が一目惚れする相手って
どんな人!?教えなよぉ」


春菜は身を乗り出してきた。
私は地元の女子高に通っている。
高校で女ばかりだと
どうも出会いがない。

だから、自分の友達に
彼氏や、片思いできる相手が現れると
根掘り葉掘り聞きたくなるんだ。


「嫌。言いたくない。
絶対馬鹿にするもん。春菜」


"梓"のドラマ-、上総に恋しました…
素直に言えたら楽なのに。
それが言えない。


"梓"は来年にも
メジャーデビューするだろうと
至る所で囁かれている。
だから、当然春菜も
知っているバンド。
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