車輪の唄
「は??意味不明だし」


スッキリしない気持ちのまま、家を出た。


自慢じゃないが、あたしの車は高級車だ。


170系のMAJESTA。


お母さんが昔、乗っていた。


お母さんも大の高級車好きで、今はCimaを悠々と乗りこなしている。


もうその時点でさっきの謎の電話の事は忘れて、椎名林檎のDVDをかけて職場へ車を走らせた。


駐車場にはやたらと多く車が止まっていた。


今岡の車の横に駐車して、後少し出勤時間まで時間を潰す。


DVDをじっと見つめて、椎名林檎のバックバンドが奏でる音に耳を澄ませる。


こうしていると出勤時間まではあっと言う間だ。


「さぁ…行こ」


鞄を掴んでエンジンを切り、鍵をかけて顔を上げた時…見知らぬ人と目が合った。


ぱっと見、極道の方かと思うくらい柄の悪いおじさん。


やたらあたしの方を見ていたから、会釈をして背中を向けた。


店に入っていくとき、ふと目についた。


あたしと同じMAJESTAが止まっている。


かなり昔の型なのに、まだ乗ってる人があたし以外にいるんだ…軽い気持ちで流した。
< 51 / 66 >

この作品をシェア

pagetop