車輪の唄
「えぇっ!?休み??」


事務室へ入っていって、素っ頓狂な声をあげた。


「そうなのよ…シフト組み間違えてた。ゴメンね。せっかく出勤してくれたのに」


主任は申し訳なさそうに謝った。


それならそれで電話してよ…


でも少し得した気分だ。


店にいた時間はたったの五分、外へ出た。


商店街はもうクリスマス一色だ。


あと4日もすればクリスマスが来る。


駐車場まで戻ると、同じMAJESTAはもう無かった。


柄の悪いおじさんもいない。


「…電話してみよっかな」


その時の自分の思考回路が自分でも理解できない。


上総に電話してみようと思ったのだ。


勇気を振り絞って発信ボタンを押した。


長いコールの後、上総は電話に出た。


「おはよ。上総、寝てた???」


上総に喋られる前にあたしが喋った。


『おはよ…寝てた』


寝ぼけた上総の声が、頭の中を何かしら洗脳する。


電話しなきゃ良かった。


そんな後悔しても、自分の責任…後の祭りだ。


「急に休みになってね」


声を上擦らせながら言うと、上総は電話の向こうで笑っていた。
< 52 / 66 >

この作品をシェア

pagetop