車輪の唄

ハﾝﾄﾞﾙの上で手を交差させて組み、その上に顎を乗せて駐車場の前を歩いていく歩行者やその向こうの車道を行き交う車を見つめていた。


待っていたら上総は来る。


そこで待っていろと言っていた。


ふと助手席に目をやると、そこには無造作に置かれたあたしの鞄と上着がある。


鞄も上着も後部席へ移動させた。


ダｯｼｭﾎﾞｰﾄﾞに入れてあったゴﾐ袋に煙草の吸い殻を入れ、見えないように運転席の足元に隠した。


自分でも思っていなかったような行動を取っている。


上総が来ないなら、会わないのなら、こんな事はしない。


あたしの命のような愛車だ、普段から綺麗にはしてある。


今日ばかりは今すぐにでも車内清掃してほしいと思った。


ＤVDの中で東京事変のボｰｶﾘｽﾄとしての椎名林檎が、緑色のドﾚｽを着て『透明人間』を歌っている。


…あなたが笑ったり飛んだり、大きく驚いた時。透き通る気持ちでちゃんと応えたいのさ…



バﾝﾄﾞを組んでいたとき、椎名林檎や東京事変をヵｳﾞｧ-していた。


だから好きなのだ。