車輪の唄
「江夏は椎名林檎、好きなんだ」

「ぁたしにとって東京事変は…椎名林檎は神様なの。命に近いものがあるね」


上総は首を縦に振ってぁたしの話を聞いていた。


「今流行ってる音楽って、何にも意味がないって思う。歌詞にも、バックミュージックにも…流行りの言葉を並べとけばいい、とりあえず音楽演奏してればいい…そうやって最初は思ってなかったバンドが、売れるに従ってそうなってしまうんだって感じて。でも東京事変は、椎名林檎は変わらないから好き。自分の世界を持ってるからね。」


椎名林檎はいつの日も支えてくれた。

甘いようで辛い。

酸いも甘いも噛み分けた人にしか書けない歌詞、魂を持った人しか奏でられない音楽。

自分に甘えそうなとき、逃げ出したくなったとき…


「甘えてんじゃないよ」


そうやって言われているようで、守られていた。


「俺と同じだね」


助手席で上総が遠い目をして呟いた。
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