車輪の唄
気付くと、家の前まで帰ってきていた。


お母さんの車が止まっているってことは、今日は帰ってきているみたいだった。


私に父親はいない。


私が三歳になってすぐ離婚したらしい。


それから私の家族はお母さんと、双子の弟と妹。


父親がいない分、お母さんは働きづめに働いている。


鳶の仕事をして、朝早くから夕方まで毎日働いている。


私が帰ってくる時間にお母さんがいることは極めて珍しい。


「ただいま」


玄関をあけると、奥の扉からお母さんが覗きこんだ。


「お母さん今日早かったんだね」


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