HARUKA -衝動の果てに-
2つの心
「3番、橘内 悠です。よろしくお願いします」
金曜日、現在10時30分。
駅にやってきた若い女の人に連れられて、今はレイルロードエンタテインメントのビルの中と思われる部屋にいる。
面接は私の番に回ってきた。
・・・といっても6人しかいないんだけど。
「橘内さん。あなたがあのファミリーレストランで歌った歌を、聴かせてもらえますか」
目の前には、3人の大人。
真ん中に、卯方 蓮治と思われる40、50代くらいの男が座っていた。
目尻に皺をよせ、ふっと笑った。
「上遠野(カトオノ)・・・ファミレスの店長が、映像を送ってくれたんです。あなたが歌っているところを撮っていたそうです。あの曲を歌ってください。それで審査します」
「歌、だけですか?」
「歌がよければ容姿や流行なんて関係ない。それがうちの定義だ」
どきっとした。
この人物は侮れないかもしれない・・・。