HARUKA -衝動の果てに-
一つひとつの単語を丁寧に歌い、終わった。
―――あっという間・・・。
「ありがとうございました」
卯方の横にいた男が言った。
「これで審査は以上です。では結果はのちほど郵送で。駅までお送りしましょうか」
「いえ、大丈夫です。道は覚えました」
「橘内さん」
太い、けれども柔らかい声で呼ばれた。
卯方だった。
「あなたは本当に素晴らしい。このオーディションを受けてくれて、ありがとう」
柔和に笑った。
彼はきっと・・・ ・・・いや、言わないでおこう。
やっと、私を見つけてくれる人に出会えた。
「・・・あたしも、ありがとうございました・・・」
初めて笑顔で退室した。