うさのさんの動物観察日記
・・・子供の頃の忌まわしい記憶は、ここまでにしておこう。
さて、一匹のアリが、うさのの足元に落ちたシャケを見つけた。
小鳥よりも体の小さいアリさんがシャケを食べたら、高血圧どころか血液が塩分で固まっちまうんじゃないか?
うさのはそう思ったが、アリはまだ若いのか、塩分や血圧のことはあまり気にしていないようだ。
2,3回くわえてみてから、
「よし♪これ、もーらいっ」
といった感じで本格的に運び始めた。
言い忘れたが、うさのはこの
「食べ物を巣に運ぶアリさん」
を見るのが、特に大好きだ。
おにぎりを急いで食べると、周囲の目はそっちのけでアリの観察を始めた。
いい大人が、膝を抱えてしゃがみこんでいる図。
コンタクトレンズを落としたか、こっぴどい仕方で振られて落ち込んでいるように見えるだろうが、そんなことはどうでもいい。
シャケを運ぶ、アリさん。
よいしょ、よいしょ。
がんばれ、アリさん。
うさのの手に、自然と力が入る。
うさのが落としたシャケは、人間から見たらほんのひとつまみ。
しかしアリから見れば、体の数十倍はある巨大な塊だ。
まるで、マグロを釣ろうとしたら間違ってクジラを釣り上げてしまった松方弘樹みたいだ。
アリさんの努力もむなしく、シャケはほとんど最初の場所から動かないまま、空しく時間だけが過ぎていく。