うさのさんの動物観察日記
赤ちゃんの泣き声のように聞こえた。近くの家の窓から漏れているのだろうか。いや、それは道路脇の駐車場から聞こえていた。
車の中に、幼児が置き去りにされているのだろうか。
うさのは、さっき出てきたショッピングセンターを振り返る。
ショッピングセンターの隣は、18歳未満は立ち入り禁止の遊技場だ。
助けを求めるような悲痛な泣き声、そしてこの周辺の環境。
これらを組み合わせて推理したとき、うさのの脳裏にある一つの、恐ろしい可能性が浮かんだ。
・・・は!!!
これはもしかして、社会問題になっている・・・
児童虐待ではないか???
うさのの胸の中に眠っていた、正義感が目を覚ました。
・・・いいえ、感謝状なんていりませんよ。
ただ、そこで尊い命が助けを求めていたから。それだけです。
テレビ局の取材に答えている自分を想像しながら、うさのは家路へ向かうルートを外れ、駐車場に停まっている車の中を確認するが、子供の姿はない。
やがてうさのは、声がある車の下から聞こえてきているのに気づいた。
その車の下をのぞきこむと・・・
手のひらに乗るほどの小さなネコが、うさのに向かって吠えていた。