うさのさんの動物観察日記
半透明のスプレーのキャップを、どこからか探してきた。
それを手に、壁に止まって小休止しているコバエの背後から、そっと近づいた。
そのキャップの中にコバエを閉じ込め、キャップごと外に放ってしまおうという、壮大な計画だ。
キャップに閉じ込められたコバエは、最初こそ突然自由を奪われて右往左往するだろうが、最後にはうさのの優しさに感謝しながら、大空へ飛び立っていくことだろう。
コバエは飛び疲れたらしく、うさのが近づいていくのに気づいていない様子。
この調子だと、意外と一発で捕獲に成功しそうだ。
うさのは、プラスチックのキャップを、コバエがちょうど中央に来るように上にかぶせた。
・・・いや、かぶせようとした。
その時。
うさのの気配に気づいたのか、コバエが壁を、上に向けて歩き出した。
あ・・・
うさのの目はそれを捉えたが、その信号が脳に伝わり、脳が手に「止まれ」と指令を送ったときには、もう遅かった。
歩き出したコバエはなぜか、途中で立ち止まる。
まるで、死神に呼び止められたかのように。
コバエが立ち止まったのは、キャップの縁が今まさに壁に接しようとしている、面積にして1c㎡にも満たないごくわずかな一箇所だった。
この広い世界の中で、わざわざその一点で立ち止まるなんて。奇跡としか言いようがない。
次の瞬間・・・