鬼の火まねく赤子の声





白峰が死んだ。
 寝ていた沖にそう告げたのは沖の母親だった。呆けた顔で遠くを見る母の姿は沖には異様だった。たしかに沖の母親は白峰を可愛がっていた。いつかは沖の嫁になんて親同士で笑い合っていたものだ。
 沖からすれば、どうして自分が白峰につり合おうかと笑いもせずに母を睨みつけていた。白峰は美しい。生まれた時から色白で、名前の通り美しい目鼻立ちをしたこだった。だけど、沖はそんな誇れる姉の足もとで、
「足首もげろ」
なんて平気で言う千鶴子の方が自分には合っていると思った。そう思わなければ、千鶴子がかわいそうだった。
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