鬼の火まねく赤子の声
その頃から母親達の戯言がなくなった。そのかわりに、「沖はなんて良い人なのだ」と言われるようになった。
「沖い」
そう聞こえたのは千鶴子が居間で寝てしまっている時だった。
沖は一瞬、誰の声か分からなくて千鶴子を見た。でも千鶴子は普段、沖のことをお兄ちゃんと呼ぶ。だから千鶴子ではなかった。
沖は窓から外を覗き見た。すると、ドンという壁を蹴るような音がした。一瞬、目を疑った。
「何で千鶴子なんよ」
そう言って歯を食いしばっているのは確かに白峰だった。
「沖い」
そう聞こえたのは千鶴子が居間で寝てしまっている時だった。
沖は一瞬、誰の声か分からなくて千鶴子を見た。でも千鶴子は普段、沖のことをお兄ちゃんと呼ぶ。だから千鶴子ではなかった。
沖は窓から外を覗き見た。すると、ドンという壁を蹴るような音がした。一瞬、目を疑った。
「何で千鶴子なんよ」
そう言って歯を食いしばっているのは確かに白峰だった。