君想論 〜2人のサヤカ〜
コレはさっきまで眠たそうに机でうなだれていた[梧 清花]ではない。
例のもう1人の人格(という名目)である“サヤカ”の方だ。
なるほど、つまり『主動権』が移り変わったワケだ。
念のため小声で……
「(いつ代わりやがった……!!??)」
「さっき」
でしょうな。
「(さっきまでの“清花”はどこに行ったよ!!??)」
「ギャアギャアうるせぇーな……眠いっつったから代わってやっただけだ」
つまりだ、“清花”が言っていた(4ページ前)「眠い」という発言は、件の“理解不能な睡眠欲”から来るものだったワケか。
メンドっくせぇーなーオイ!!??
「“清花”がどーだったかは知らねぇーけど、馴れ馴れしくあたしに話しかけんな」
そう言って、またもや顔を机に伏せてしまった。
……っつーか、人が気を使って小声で話してるってのによ、お前が不注意なんじゃ話にならんぞ。
「(コラ、梧。寝んじゃない!!!!」
「だから……気安く話しかけんじゃねぇーつってんだろッ!!??」
声がデカい、声がデカい!!!!
ほら〜、件の[噂好き女子達]の興味深々な眼差しが集中放火!!!!
「いやだから、お前の昼飯……」
「知るか」
「いやいや、お前の財布から出た金だからねッ!!??」
「いらねーよ、テメェーで食え」
そうしたいところは山々だが、これは昨日のメロンパンとは訳が違う。
頼まれたお使いの品を本人の断りもなく食えるかってんだ。
このメロンパンはさっきまでここにいた、お前のもう一つの人格である“清花”に頼まれたものであって――………
あれ……??
あぁー、イヤイヤイヤイヤ!!!!
間違えたよ、二重人格でなくそう言う設定なだけであった。
危ない危ない、危うく流されるところだったよ。
ということはこの場合、金を渡した本人が「食っていい」と言っているのだから、遠慮せず頂いて構わないんだな。
そう、構わないワケである。
「……………」
……うん、構わないのだ……