君想論 〜2人のサヤカ〜
おいおい、椎名ちゃん止めときなって。
君は見ていないかもしれんけど、ソイツはさっきまで不機嫌オーラを出していて、加えてつい先程、柿金の鬱陶しいちょっかいにより更にグロいオーラを出しているんだ。
それ以上触れたらいよいよ爆発すっぞ!!??
「どうですか??梧さん♪」
そう言って椎名ちゃんは、悪魔の使徒をも浄化するエンジェルスマイルを浮かべる。
そして、そっと顔を伏せる[梧 清花]の肩に細くて綺麗な手を置く。
……が、[梧 清花]はその手を乱暴に払いのけ、椎名ちゃんを睨み付ける。
「うぜぇーんだよ……どいつもこいつも、気安く話しかけんな……」
「でも、そうやって周り人と距離をおいていたら、誰とも仲良くなれませんよ??」
「テメェーには関係ねぇーだろッ!!!!」
ほーら、言わんこっちゃないよもぅ!!!!
[梧 清花]は机に立てかけてあったト字型の杖を左手でガシッと掴む。
この凶暴な“サヤカ”と杖の組み合わせとくればおぞましい記憶がある。
2日前、廊下で[梧 清花]の豹変を初めて見た時、椎名ちゃんはコイツに杖で殴られそうになったのである。
あんなバイオレンスな出来事をこんな場所で再来させるのはマズいな。
「ちょっと待て梧!!!!」
オレは[梧 清花]の左手を上から押さえてひとまず制し、
「そうやってすぐ暴力に走るのは止めろ。中学生かお前は!!??」
「……………」
[梧 清花]の冷ややかな視線を受け、若干後悔をし始めたがもう後には退けず……これ以上の注目を浴びないように念のため小声で……
「(学校生活で誰とも関わらずに過ごすなんて出来るわけないだろ……!!??お前はこれから話し掛けてくる奴を全員その杖で脅しかけんのかよ……??)」
「……………」
「(仲良し子よしでいましょうってんじゃないんだ。少しくらい良いだろ??昼休みに机に集まって飯食うなんて誰だってしてることだろ??)」
一体、何が不満なんだよお前はよ!!??