君想論 〜2人のサヤカ〜


「こ、これ全部桐のんが作ったのー!!??すっごーい!!!!」

「あぁ。別に驚くほどのモノでもないけどな」

「そんなことないですよ!!!!これ凄く手が込んでますよ……学校に持ってくるお弁当のクオリティ越えちゃってますよ」


2人が桐野くん自作の弁当に釘付けになるも、イマイチ誇らかになれない。

別に“努力”して身に付いた技能でもないからな。

ちなみに、[梧 清花]は本当に興味がないらしく黙々とメロンパンを食べていた。


「昨日の晩飯の当番がオレだったんだよ。だからその延長で朝飯もオレが作ることになってな。自然な流れだよ」

「でも、家族の料理を任せられてるって凄いことじゃないですか♪」


椎名ちゃんがさっきから笑顔を絶やさず賞賛してくれる。

嬉しい反面、そもそも料理をせねばならんようになった動機が残念極まりない。


「オレの家の主婦が栄養士の資格を持っていてな。それを側で見て育ったから自然と身に付いたんだよ」


オレは自作の酢豚を口に運びながら続けた。


「けど最近、ソイツに任せ切りにすることに不安を覚えるようになってな……だから仕方なくオレも家事するようになったんだよ」

「不安……ですか……??」


椎名ちゃんは銀紙に包まれたおにぎりをくわえながら疑問符つきで相槌を打つ。



その間、[梧 清花]はメロンパンを食べていた。


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