君想論 〜2人のサヤカ〜


「ウチの家事担当は母親じゃないんだよ」

「えっ……??」


オレのさり気ない告白に椎名ちゃんが驚きの声を挙げる。

そして……その言葉の意に何となく気付いてくれた用で、オレを気遣ってか、それ以上は何も言わずに口を噤んでくれた。

流石だよ椎名ちゃん、オレもあまり話したくない話題だからね。

桐野くん、空気の読める女の子大好き。





と思ったが、相方は椎名ちゃんより鈍感だった。


「あれ……??お母さんじゃないってことは、お父さん……??」

(……イッセー……)


そういうこと言ってんじゃないのよ柿金さん……

しかし、ここで言い淀んでも結果は同じなので正直に告白。




「[ばーさん]だよ。ウチの家事担当はな」


具体的に言うと、父方の祖母だ。

昔は料理を専攻する職業に就いていたのだが、今はもう退職している老女さんだよ。


ここまで話したら、椎名ちゃんと同じく意を組んで欲しかったのだが……

如何せん、柿金は出来れば一番して欲しくない質問を例文通りぶつけてきた。


「あれれ……??じゃあ、お父さんとお母さんは……??」

「(イッセー……!!!!)」


椎名ちゃんが小声で制するがもう遅いかった。

ここまでストレートに聞かれるとかわすのも難しい。

昔は話したくないから平気で嘘で誤魔化していたが、この年になってくると意外とスルッと言えてしまうものだ。




柿金こんちくしょーめ……


お前のせいで話す必要がなかった告白をしなければならなくなったではないか……!!??




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