君想論 〜2人のサヤカ〜
旅行の帰りの車で、両親は交通事故にあったらしい。
追突事故だ。
父さんの居眠り運転が原因らしく過失は此方にあった。
誰を恨めばいいのかも分からない、不幸な事故だった。
両親の葬式に出席していた頃には、2人の[死]をオレは子供ながら理解していたらしい。
もう2人は二度と帰ってこない。
それは悲しいことだった筈なのだが、人間ってのは本当に便利な生き物だ。
当時のことは全て忘れてしまったよ。
本当に心苦しいと記憶に残っているのはその後の出来事だ。
オレは親戚の間でたらい回しにあった。
突然の事故で両親を失ったオレを、誰も引き取ろうとはせず、まるでオレを疫病神か何かのように扱われ、親戚間でなすりつけが起こった。
自分という存在が誰にも必要とされず、煙たがられることが何より辛かったことを今でも覚えている。
そして、孤児になる寸前だったところで、父方の祖父母がオレを引き取ってくれたのだ。
高齢の祖父母にオレを養う程の経済力は期待されていなかったらしいが、それでも今日に至るまで祖父母はオレを育ててくれた。
今では、あのじーさんばーさんがオレの両親である。
高齢だが、オレを大学に入学させてやると意気込むほどパワフルな爺婆だ。
この両親に至っては、今日まで何も不満を感じたことはない。
まぁ欲を言えば、もう少し年相応の貫禄を持った静けさを身につけて欲しい。
っと言ったところであろうかね……
―――…………