君想論 〜2人のサヤカ〜
そんなこんなで更衣室を覗き見る桐野くんは、実のところ胸の内に切なる願望を秘めていたのであった。
うっすら見える女体のシルエットにある人物の妄想を膨らませていた訳である。
「……やっぱりいないのか……??」
ポツリと独り言を漏らした桐野くんの脳内に浮かんでいる人物。
そう。
巷(ちまた)で話題の転校生[梧 清花]である。
昨日の昼に売店前で[梧 清花]と掛け合いをして以降、どうにもアイツの存在がオレの脳内思考をくすぶって来やがる。
いやいや、「一目惚れした」とかそんな安直に考えなさるな読者諸君……??
いや、確かに[梧 清花]の第一印象は最悪を通り越してドン引きだった。
だがしかし、昼間に見れたアイツの第一印象とはかけ離れたもう一つの顔には、衝撃的なギャップを感じてしまったことには否めない。
顔も声もかなり可愛い。
水色ジャージの下に隠れたナイス・ボディ(予想)には、もう「ご馳走様」の一言だ。
正直な話、純粋な男子高校生ならば、まずときめかない方が不思議だ。
桐野くんが[純粋な男子高校生]に当てはまるかどうかはまた別の話になるが……
とにかく、[梧 清花]の存在感はオレの中で徐々に膨らみつつあるのである。
_