君想論 〜2人のサヤカ〜
(転校生ねぇー……)
オレがいつものように窓際の席から、校庭で朝練をしている女子陸上部のスパッツに視神経を集中させていると、クラスの噂好きの女子グループからそんな話が聞こえてきた。
「嘘ーっ!!??私、そんな話聞いてないんだけどーっ!!!!」
「うん。何か急な話だったみたいだよー!!!!」
このオレの特技たるものは、教室の自分の席で独り佇(たたず)んでいる雰囲気を周囲に醸し出しつつ、近くに駄弁っている噂好きの女子グループの会話を盗み聞くことだ。
小奴らの情報量は、アルプスを埋め尽くさんばかりに莫大で、単に「噂だ」と見切りを付けるには勿体ない程に質が高い。
故にそれを利用するという事項は、毎朝、日刊新聞を読むことくらい習慣化しても良いことなのだよ。
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