勝手に好きです!
シスコンな王子
スタスタと扉に向かう真さん、完全予約制のうちの整体院では待ち人はいない。それでも、真さんのその神々しい程の美形に飾られたパキラも必死に存在をアピールしているように見えるあたり、流石だね!真さん!
「あ、水嶋君、いらっしゃい」
温和な声、ひょいっと顔を出したこの、人の良さそうなスマイルは私のお父さん。淡い茶色、ふわふわの猫毛のくせっ毛が揺れる。私の髪質は間違いなく父親ゆずりなのにお父さんの方が可愛いらしく見えるのは何故。
「真夏、水嶋君が迷惑そうだよ?早く家に帰りなさい」
お父さんの声に、真さんは私をチラリとも見ず部屋に入っていく。
くそぉ、処置室に入ってしまえばそこは聖域。私は入れない事を知っての所業か!なんたる悪の極み!
「真夏?水嶋さんも暇じゃないんだよー」
お父さんの気の抜けた声に舌打ちしつつ、私は本日の負けを感じながらすごすごと背を向けた。