勝手に好きです!
「そーこまで!!」
まさに、一人の女性が入口まで詰めかけた瞬間、掠れたハスキーボイスが力いっぱい響き渡った。
私からはまる見えのその声の主の登場に、やられた、と言いたくなるのを我慢する。出待ちの皆様も背中から聞こえただろうその声に振り返った。
「「…えっ!?」」
おう、見事に一同声が揃ったね。
「…ハル?ハルじゃない!?」
誰がその名を呼んだのか、視線の先、つまりそのハスキーボイスの主の名前を。
そこに少しだけ息を切らして立つ人は僅かな汗も青春の一ページを彩りそうな雰囲気を全身から醸し出していた。緩やかウェーブのかかる襟足の長い髪。きめ細かい肌。彫りの深い目鼻立ちに生意気そうな口元。少年と青年の間の中性的な容姿は、どこか甘ったるい香りがする。
『王子様』と表現するのが一番しっくりくる、そんな容姿。
私はそれを確認して、軽くやさぐれた。