勝手に好きです!

ガンッと派手な音がして私が瞬きする時間には、無念の形になったお魚様が横たわっていた。

「生きが良いわね」


フフフ、と笑った蓉子さん。土下座したい雰囲気なのは何故。

「私、魚なんて捌いた事ないのよね。陽斗に手伝わせようと思ったら『姉さんの匂いが近い!』って叫んで出てくんだもの。あの子も大概役に立たない変態だわ」

息子をサラリと足蹴にすると蓉子さんはうっとりする程綺麗な微笑で首を傾げた。
 包丁をもう一度振り上げる、その動作に、いかんっ!と危機感が囃し立てる。



「私が捌くのです!」



慌てて声を上げるとピタリと蓉子さんの手が止まって間一髪間に合った。

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