チャンピオン【完】
☆チャンピオン☆

1※プリティープリーズ





記者会見会場は、お金がないからうちのビル。

練習場のリングの前に長机が並べられた。


リングのロープに団体旗をガムテープで貼り付けたら、なんとなくそれっぽくなった。


向かい合うパイプ椅子のところから、激しいフラッシュ。

入院中のパパから「某プロレス団体会長代理」の肩書きを渡された一郎兄貴は、慣れないスーツのせいもあるのか、緊張した面持ち。
眼鏡の真ん中を押さえるのも落ち着かない時の癖だ。


並んで座る看板レスラーの彼は、見慣れた黒いジャージ姿。

いつもの無表情を崩さない。



私、知ってる。

兄貴の隣に立つ、場違いに怪しいもの。

黒い皮で出来た紐のような、これは衣装。

どこかで拾って来たらしきマネキンの整った顔の目元には、蝶の形をしたスパンコールの仮面。

ご丁寧にその手にあるのは鞭です。


司会者に指されて立ち上がった記者さんが、当然の疑問を口にした。


『... 女王様ですか』

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