チャンピオン【完】
次の瞬間、派手な音を立てて私の身体のすぐ脇を扉とモップが飛んで行った。
「... !?」
入口の扉はトイレの小部屋二つ分を超え、壁にぶつかって見事に破壊された。
私が振り向くと、扉があったところには、右足をこちらに伸ばした男が無表情に立っていた。
私と目が合った貴丸が、ゆっくりと足を降ろす。
化け物だ!!
フライパン素手で曲げただけでは飽き足らず、鍵のついた扉とバリケードのモップごと、蹴り飛ばしやがった。
「... あ、あぶね...」
私の横を、股間を押さえた練習生たちがキャーと声を上げつつ擦り抜けて行った。
私はすかさず腕を取られ、兄貴に抱き寄せられていた。
「会いたかったよ~、詩ぁ♪ もう離さない!」
6時間ぶりの感動の再会にも、怪物はヤレヤレと無言だ。