チャンピオン【完】

どう考えてもおかしいのに、それを見た観客は無邪気に喜び、歓声が上がる。


私は何より、この状況を楽しんでいる観客の懐のでかさに驚いていた。






再びリングには、兄貴二人が残った。

こうなるとガチだ。目の色が違う。

女子がいるときとは違うスピードの、派手技の応酬。



貴丸がマグマの髪を掴み、身体ごとロープを潜らせる。

そのまま落とすのかと思いきや、マグマの背中にロープを3本ともかませて、逆さに飛びついた。

赤い髪の散る両脇を両足で固め、一番下のロープの下から相手の足を掴み上げるとがっちりロックした。

逆さまの貴丸が蹲るように反動をつけると、ロープが軋んで相手の身体に食い込み、マグマがまるで蜘蛛の巣に捕まったみたいに見える。



観客に向かって磔にされたマグマが呻いた。

超晒し物だ。

観客から怒涛の歓声が上がった。



それに紛れ、私に近づいた兄貴が言う。

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