チャンピオン【完】


ミコトの黄色い悲鳴は、場外の彼氏にも届いたらしかった。


放されないようミコトの手を捻りあげた私は、ギュッと力を込めて目を閉じていたけど、「避けろ、詩っ」と言う一郎兄貴の声に、本能的に目を開けた。




でも開けなきゃよかった。


私の見たのは、私に向かってパイプ椅子を振り被ったマグマ。

実況席から持って来ちゃった?


今の場外乱闘と彼女のピンチで、目は完全にイッちゃってる。



私の足はミコトの身体にかかっているから、あのパイプ椅子が振り下ろされるのは私の上半身。

きっと死ぬ。



勝とうとしたりして、ごめんなさい。

私が死んだら、パパも兄貴もきっと泣く。



貴丸は泣いてくれるかな。

そういえば、今日になってから一言も口聞いてないや... 。

< 105 / 131 >

この作品をシェア

pagetop