チャンピオン【完】
ミコトの黄色い悲鳴は、場外の彼氏にも届いたらしかった。
放されないようミコトの手を捻りあげた私は、ギュッと力を込めて目を閉じていたけど、「避けろ、詩っ」と言う一郎兄貴の声に、本能的に目を開けた。
でも開けなきゃよかった。
私の見たのは、私に向かってパイプ椅子を振り被ったマグマ。
実況席から持って来ちゃった?
今の場外乱闘と彼女のピンチで、目は完全にイッちゃってる。
私の足はミコトの身体にかかっているから、あのパイプ椅子が振り下ろされるのは私の上半身。
きっと死ぬ。
勝とうとしたりして、ごめんなさい。
私が死んだら、パパも兄貴もきっと泣く。
貴丸は泣いてくれるかな。
そういえば、今日になってから一言も口聞いてないや... 。