チャンピオン【完】
死を覚悟した私は再び目を閉じた。
バキと何かの折れる音が響いた。
痛くないのは、きっと私が死んだからだ。
だってあんなに煩かった歓声が止んでいる。
「生きてっか?」
静まり返った中、すぐそばではっきりとその声が私に聞こえた。
... お前がな、と泣きそうな気持ちで私は思った。
私を庇ってパイプ椅子の容赦ない一撃を、貴丸は後頭部に受けていた。
自らの頭の後ろに手を当て、その掌の血をゾッとするほどの無表情で彼は見た。
それからゆらりと立ち上がり、立ち尽くすマグマの肩をトンと押して背後に回った。
されるがままのマグマの腰に両手が掛る。
ハッときがついた様子のミコトが這いあがって来て私に乗り、上体をリングに押し付けた。
苦しい、息出来ない。