チャンピオン【完】


死を覚悟した私は再び目を閉じた。


バキと何かの折れる音が響いた。

痛くないのは、きっと私が死んだからだ。


だってあんなに煩かった歓声が止んでいる。



「生きてっか?」

静まり返った中、すぐそばではっきりとその声が私に聞こえた。


... お前がな、と泣きそうな気持ちで私は思った。



私を庇ってパイプ椅子の容赦ない一撃を、貴丸は後頭部に受けていた。

自らの頭の後ろに手を当て、その掌の血をゾッとするほどの無表情で彼は見た。


それからゆらりと立ち上がり、立ち尽くすマグマの肩をトンと押して背後に回った。

されるがままのマグマの腰に両手が掛る。


ハッときがついた様子のミコトが這いあがって来て私に乗り、上体をリングに押し付けた。



苦しい、息出来ない。

< 106 / 131 >

この作品をシェア

pagetop