チャンピオン【完】
お腹がいっぱいになった私はお手洗いに行くふりをして、みんなに気付かれないようにその居酒屋を出た。
それから残り少ないお小遣いをはたいて、コンビニで一番高いお弁当を購入した。
私は奴が欲しい物なんてわからず、ティファニーを買う財力もないのであった。
人気のない我がビルに戻り、私は一直線に昨夜訪れた貴丸の部屋の扉を叩いた。
お弁当温めて貰っちゃったから、急いだだけだ。
「... 怪我したとこ、痛いの?」
内側から扉が開き、見上げた奴は私の姿に驚いたようであった。
それよりも、何故か泣いているから私が驚いた。
貴丸は首を振り、無言で部屋の中を指さした。
テレビに『感動のラブ・ストーリー!!』と銘打たれた映画の、今まさにクライマックスシーンが映っていた。
そうだこいつ、前も泣いてた。
「... 泣くなら見なきゃよくね?」