チャンピオン【完】
確かに了くんの言うとおり。
何処かの新聞が面白がって、仮面がとれた事を記事にするに違いないと思っていたのにそんなこともなく、プロレス業界の懐の深さをまたも私は思い知ることとなった。
私は貴丸の部屋に入り浸っている。
学校帰りにレンタルしてくる、続きものの韓流ドラマのDVDを一緒に見ているからだ。
「この人、可哀想... 」
そしてそれを見た彼は画面を指さし、相変わらずメソメソと泣いている。
これにはようやく慣れた。
「あんた一々感情移入し過ぎだよ! それよりいい加減、この部屋のダンボール片づけたら!?」
乱暴な言葉と裏腹に、私は自分の膝の上の彼の髪を撫でた。
あれだけ血が出た後頭部の傷はもう跡かたもない。
やっぱり化け物なのだ。
彼はグスと鼻をすすり、起き上がってちり紙に手を伸ばした。
「いや、すぐ引っ越すから。あんまり荷を解かなかったんだって」
「え」