チャンピオン【完】
15※プリーズミー
※
蛇足。
一郎兄貴が部屋にいない。
私は彼の姿を求め、暗闇のビルの中を彷徨っていた。
だって、いきなり明日不動産屋さん行くとか言いだすんだもん。
家具も一緒に選びに行く?
食器は? カーテンの色は?
話していたら目眩がするほど楽しくて、初めてかかったこの病気に私はすっかりやられていた。
パパはいないから、まずはあの兄貴だ。
ひと月前に貴丸によって破壊されたままのお手洗いの中から、出て来た人影があった。
お兄ちゃん、と言いかけてやめる。
その人物の動きがやたらと素早く、なんだか人目を忍んでいるように見えたからだ。
なんだか怪しい匂いがする。
まさか、こんなお金のなさそうなプロレス団体のビルに泥棒... !?