チャンピオン【完】
私と貴丸を見て、愕然とした兄貴。
「一郎じゃん。なにやってんの、明かりもつけないで」
「... 」
何にも知らない貴丸が、入口の横の灯りのスイッチを入れた。
貴丸の蹴った扉は、ソファーの人物一人を押し潰していた。
その力なく伸びた腕に握られた封筒。
『御心付け』とかかれたこれが私の目的だ。
ヒョイと私はそれを手から抜き取り、TUTAYA袋に収めた。
引っ越し費用に足すことにする。
「あれ、誰か死んでる? 大丈夫ですか」
死んでたら大丈夫ではない、と私は思った。
貴丸が扉を起こした。
そこにいたのは、インド人ではなかった。
「... 誰ですか」
「うう... 」
頭を押さえて呻いているのは、金髪ロン毛のイケメン。
王子様のようなその完璧な容姿に、私はこの状況も忘れて溜息が出た。