チャンピオン【完】
「チッ、インド人は逃げたのか... ! それで、あなたさまは?」
3人目がいる事は予想していなかった。
「私は、... 誰でしょう? どうやらいまの衝撃で、記憶喪失になってしまったようです」
「大変です。ちょっとあんた! ぼーっとしてないで救急車呼びなさいよ?!」
扉を片づけている別にぼーっとしてはいない貴丸にテキパキと指示を出し、私は心配そうに金髪のお兄さんの手を握った。
こんな姿をしていて、すごく綺麗な日本語だ。
あとで写メを撮ろう。
いえ、撮らせて頂こう。
「いえ、大丈夫です。ちょっと夜風に当たればなんとかなるでしょう... それでは、私はこれで」
「あ! 待って下さい! せめてお名前を... ?」
イケメンは既に窓枠に飛び乗っている。
彼は夜風にサラリと金髪をなびかせ、愁いを含んだ青い目を細めた。
「名乗るほどの者ではありません。(つーか、記憶喪失だって言ってるだろ、聞けよ)」
「キャー!!!」
そんな台詞、イケメンにしか似合わない。
私はうっとりと彼の消えた窓を眺めた。