チャンピオン【完】
大体試合なんて、こいつが一人でやったらいいのだ。
どうして私がつきあわなくてはならないのか。
食欲も失せて頬杖をついた私の正面に、貴丸は許可もとらずドカと腰かけた。
二人きりなんて初めてだ。
私はビビっていることを悟られぬよう、何か武器になるものを視界の中で探した。
そんな私にはお構いなく、怪物は不躾に私をたっぷりと無言で見つめてから口を開いた。
「おい、女子高生」
「... なによ?」
殺すぞ、と言われたらこのタバスコを投げつけて、逃げよう。
多少の時間稼ぎにはなるだろう。
「...... 」
「... 悪いな、俺のせいでいろいろと」
!? 謝られました!!!
目を見張る私。
貴丸は自分の言葉に照れたようにも見える様子で、大きな手で首の後ろを掻いた。