チャンピオン【完】
大量の肉が山盛りにされた大皿を届けに来た男の店員さんが、本当はこっちが目的!とばかりに色紙をとりだして貴丸にサインを頼んでる。
「試合、頑張って下さい!」
店員さんは握手して貰い、感動したように色紙を抱えて戻って行った。
試合ねぇ、...
私がウンと言わなければ、あの記者会見の試合はなくなくなってしまうのでしょうか。
トングを使わず皿ごと焼き網の上にひっくり返そうとしている彼から、私は肉を奪い取った。
「シンジランナイ! 私がやる」
どんだけ野獣だ。
きっとこいつは生肉でも食う。
「... 皿持っててやろうか?」
「焼けたらとってあげるから、大人しくしてて!」
全く、どっちが大人だよ。
仲良く話すような共通の話題もない私たち。
ジュウジュウと良い音と香りの中、訪れるのはやっぱり無言の気不味い空間だ。