チャンピオン【完】
貴丸は大ジョッキを置くと二人掛けの長椅子に両腕を預けて大きく仰け反り、そりゃもうかったるそうにして言った。
「お前が俺と組むのを嫌がるのもわからなくはねえ。
知らない奴に背中預けるのは、俺でも嫌だ。
信用できる相手じゃないとタッグなんて組めないだろ?」
知って嫌になったらどうするんだよ?
「そういうことじゃなくて。
私はプロレスが嫌なの!
あんなエロい格好して人前で殴られるのなんてごめんなの!」
「どうして? あれくらいのコスチューム、女子プロならいくらでもいるぞ?」
「その女子プロがやりたくないんだってば!!」
考え方に相違があるようだ。
貴丸はわけがわからないと言う顔をした。
これは私がわからせないと不味いか?
私は身を乗り出した。
「私はただの女子高生で、プロレスになんか興味ないの!
兄貴がどうして突然こんなことしろって言いだしたのかも全然分かんない!
お願いだからあんたも兄貴に諦めろって頼んでよ!?」