チャンピオン【完】

5※ハートレス





小気味良い音と共に、このジムの中では一番貴丸と体格差のないプロ選手が、ロープに吹っ飛んだ。

ビヨンと跳ね返って倒れ、起き上がらない。


あの人、死んだのかもしれない...

私があんな風に蹴られたら、間違いなく死ぬ。



「あら? 詩がここに来るなんて珍しいじゃない☆」

リングから離れた練習場の端で、息をのんでパイプ椅子に腰かけていた私に話しかけて来たのは兄貴。

兄貴が見ていた若い練習生くんたちは、これからランニングメニューらしい。


その際、入口に場違いに立っているあのトルソーに柏手を打って拝んで行った。

女王様にはいつの間にか『触るな! 壊すな! 25万円!』と言う張り紙がしてあった。


「あれ、安全祈願♪」

「へ、へぇ... 」

何の効果もないと思うよ?

だって女王様、神様じゃないし。

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