チャンピオン【完】

追悼と言う言葉の示す通り、彼はすでにこの世の人ではない。

番組の最初に出て来た黒枠の中の彼は、パパの年代の人に見えた。

それでも十分若すぎる死だ。


三好のデビュー戦。

チャンピオンに上り詰めるまでの苦労話。

インタビューシーンで登場したのは、どこかのホテルの中にいるうちのパパだった。


「パパだ」

「ええ!? 詩ちゃん、史郎の娘なの!?」

ウン。

パパは結構早くに引退し、後進を育てるために団体を作ってその経営だけに専念していたが、若いころはとんでもないレスラーだったと聞いた。

聞いただけでこれもそこまで興味がなかった。



番組の最後の方、『運命の最終戦』。

リングにいるのは三好と5年前の貴丸だ。


「貴丸、若ーい!」

「この時22だからね。むちゃくちゃ強かった。
この試合で三好がベルト奪われたら、引退して世代交代だとか...
もし貴丸が負けても、再戦までは相当盛り上がったはずなんだ。

この試合はプロレス業界のシナリオの上で、相当デカい意味を持ってた。

結果は違う意味で事件になっちゃったんだけどね」

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