チャンピオン【完】

貴丸の背中に跨った三好が、貴丸の足を持ち上げて咆哮した顔がアップになり、画面が変わった。

二回りほども若い貴丸とやり合うのが、やたらと楽しそうな三好の表情が私の頭に残った。


「何度見ても綺麗なテキサスクローバーホールドだ。やっぱ三好は伝説。すげーわ」

手持ち無沙汰にリモコンを弄りつつ、感心したような了くんの声。



チャンピオンベルトを高く掲げた、貴丸との試合よりも若い三好。

テロップは白黒になり、『偉大なる三好よ 永遠に』の字が浮かびあがって終わった。




「... なにがあったの?」

もうわかるけど、聞かずにいられない。

最終戦を最後まで映さないのは、そういうことなんだろう。


「俺もここからは動画サイトで見ただけなんだけどさ。さっきのテキサスクローバーホールドのあとの技を、貴丸がクイックで返すんだ。
それから驚いてる三好に、ジャーマンスープレックス決める。
それで貴丸が勝った。

ただ... カウントが終わっても、三好は起きなかった」

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