チャンピオン【完】
「でもタッグだったら、女子同士がやり合ってる時に決着つけたらいいんだ♪
貴丸とマグマはガチでも、妃ミコトが勝てば試合は向こうの勝ち♪」
「はぁ!? 私に負けろってことですか!?」
「最初から勝てるなんて思ってないよ♪ いくらアイドルだって、相手はプロだっての。詩は怪我しないようにしてくれたら良い♪
これが身内以外に頼めない事情。
良い子の詩は、わかったかな☆」
内容は呑み込めたが、納得はできなかった。
だって、勝負にそんな筋書きあるとか信じられない。
「... マグマって奴、強いの?」
「若手の中じゃ一番じゃないかな☆ でも大丈夫。
プロレスには『受けの美学』と言う素晴らしいものがあるのだ♪」
兄貴の言葉は、私にはさっぱり意味不明。
だから大丈夫と言われたって、全然安心できないのでした。
貴丸は毎日、ストイックなほど淡々と練習をこなしていた。
心から負けたくないのが伝わって来て、なんだか私はやりきれなくなっていた。
こんなに頑張ったって、試合の負けは決まっているのだ。