チャンピオン【完】
プロレスってなんなんだろ?
デキレースのためにトレーニングして、何が面白いんだかね。
相変わらず特になにかを教えてくれようとはしない。
貴丸はリングサイドのマットの上、ミットを構えたジョニーに脇目も振らずに殴りかかっていた。
「フフ... 悪クネェゼ。今日ハコノヘンニシトクカ」
コクと頷いてドリンクをとりに行く。
その前に、こっちを向いて目が合った。
「...... 」
「...... 」
なんだぁ、見てんじゃねーよ!!
フンと私は露骨にそっぽを向いた。
最近良く目が合う。
自分が見てしまっているのだから当然だ。
だって私、慣れていないのだ。
ずっと男ばかりの中で、お姫さま扱いだった。
せっかく協力してやると言っているのに、この放置プレイは、逆に何なんでしょう? って思うじゃん。
可愛くない私の態度を見て、貴丸は相も変わらず冷たい無表情。