チャンピオン【完】
なんでこんな脳筋野郎が気になるのか。
死にたい。
私は学校から帰ると練習に合流して、邪魔したり、はじっこでエクササイズを真面目に繰り返したりしていた。
「対戦相手のビデオ来たって。お前も見るか?」
それでも自分から話しかけてくれるようにはなった。
みんなが練習を終えて引き上げる中、私たちは二人で小さなテレビ画面の前に座り込んだ。
相手の団体は金持ちらしく、画面に映った会見場はちゃんとしたホテルの中だった。
真っ赤な逆毛のデカいお兄ちゃんと、カメラ目線のポニーテール女子が並んでいる。
『あいつのあの刺青が許せない。三好社長への侮辱ととります。俺が、殺す』
この赤い髪がマグマって奴らしい。
紹介映像で、試合中のマグマが外国人選手を放り投げているところが映った。
肩口に真っ赤な鳳凰の刺青。
『5年も逃げてた奴の戻る場所なんてありませんよ。
奴のいない間、日本のプロレスを支えてたのは俺達です』